昨日観た、トラン・アン・ユンの「ノルウェイの森」が夢のなかの出来事のようにすっかり忘れ去られてしまっているのに今朝になって驚いた。そういうことを狙った映画なんだ、原作もそうだったんだ、という驚くべき確認。
美しい映像、トラウマたちの、しのぎあいの物語。性愛の袋小路を生の倫理として生きなおそうというフラットな男のだれも傷つけない閉じられた妄想の世界、いやその一歩手前で映画は止まっているというべきか。「わたしはぬれたことがなかった」というナオコの台詞。トラン・アン・ユンの映画で一番美しいのは、そういうナオコとワタナベクンをあの時代のなつかしいアパートの窓のなかに閉じこめながら、永遠にわたるかのように降り続ける雨だ、ぬれた雨、しかし、この雨でさえ、いやらしいフォークソングの雨とはちがい、ぬれながらどこか乾いている、その雨の映像だ。
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