2010年12月22日水曜日

go out in midwinter

八王子中央図書館で、
若島正の『ロリータ、ロリータ、ロリータ』(作品社)、平川祐弘『アーサー・ウェイリー 源氏物語の翻訳者』(白水社)、サミュエル・ベケット『ワット』高橋康也訳(白水社)、同『また終わるために』高橋・宇野邦一訳(書肆山田)、同『マーフイ』三輪秀彦訳(早川書房)を借りてきた。ベケットの本は陳列されていず、調べてもらって、すべて書庫から持ってきてくれたもの。遅れてきたベケット愛好者としては『短編集』(白水社)も読みたかったが、これはこの図書館にはないということ。都立のどこかの図書館にあるかもしれない、その本をこの図書館が借りることができるなら、貸し出すことも可能だというので、そのための手続きをする。アマゾンで調べたら、二冊ほどそれぞれ異なる古本屋が所蔵し、出品していた。値段は、なんと五万円近い。いくら好きでも、定年退職者には購入する元気をうちひしぐ値段である。そこで困ったときの図書館ということで、今日は外出したのであった。

それに今日はベケットの命日でもある(こういう想起の仕方をベケットは笑うだろうか)。1989年の12月22日、彼は83歳で亡くなった。それに加えて冬至の日か。イエスの磔刑の日4月13日1906年に生まれ、昼日の一番短い冬至に亡くなるとは、いかにもベケットらしい極から極の〈文学〉を象徴している。処女長編小説といわれる『マーフィ』(1938年出版されたが反響なし、1947年にベケット自身によるフランス語版が出て読み直されたという)の冒頭は、
「それ以外に方法がないままに、太陽はなにひとつ新しいところがないものの上に照り輝いていた。マーフィは、まるで自由であるみたいに、それに背を向けて、ロンドンのウエスト・ブロンプトンの袋小路の奥に坐っていた。」と始まる。このはじまりについていろんなことが言えそうだが…。

あくがれて今日まで待ちしベケット忌
日の下に新しきなきベケット忌
行くわれを低き日が嘲うベケット忌

書記典主故園に遊ぶ冬至哉   蕪村
穴八幡に札求めたり寒き日に
柚三個浮かぶ湯船に許されて
しわ深きベケット隠る冬至哉

0 件のコメント: