2011年2月24日木曜日

麗しき果実

 出光美術館、「転生する美の世界」と題された江戸琳派、酒井抱一、鈴木其一らの展覧会に行く。これは―酒井抱一生誕250年「琳派芸術」―の第二部の特別展で、酒井や鈴木の作品が第一部の時よりも多く展示されているということだけで、私は見に行ったのだが、ただ、ただ素晴らしかった。門外漢としてそれだけしか言えないのが残念なのだが、二時間ほど美術館で魂を奪われていた。抱一は言うまでもないが、私はその弟子の鈴木其一の秋草図屏風や藤花図などにも惹かれた。抱一の秋草図や燕子花図屏風の鮮烈さは圧倒的である。風神・雷神図もはじめて関心を持って視た。文化・芸術というものは発展などという概念とは無縁であって、いつでもその極点で輝いているものがそうで、とくに江戸美術の爛熟はもうそれ以上はありえないものだということを今回も思った。それに比べて…はなどという必要もない。
 乙川優三郎の新聞連載小説『麗しき果実』に出てくる実在の人物、原羊遊斎、酒井抱一、鈴木其一たちの実際の作品に出会えたわけだ。原羊遊斎の蒔絵もあった。抱一や其一の図案帖も。たしか乙川の作品ではヒロインの女性が蒔絵の世界で苦闘して行くというものだった、そこに原羊遊斎や酒井抱一の大物がいて、鈴木其一との淡いロマンスもあったような記憶がある。単行本になっているだろうから、暇があったら読み返してみたい。乙川の丁寧な文章にひかれて、新聞小説、まして歴史小説などを自分自身が毎日期待しながら読んだのも珍しいことだった。何かの縁だろう。
 妻と二人で、有楽町のガード下の居酒屋で飲んだ。私は金陵の熱燗二本。おでんなど。いい気持ちで東京駅始発の中央線に乗り帰宅す。

0 件のコメント: