2011年2月7日月曜日

Politics

イェイツの詩に、"Politics"というのがある。
以下に原詩と訳文(高松雄一「対訳 イェイツ詩集」岩波文庫)を引用する。

How can I, that girl standing there,
My attention fix
On Roman or on Russian
Or on Spanish politics?
Yet here's a travelled man that knows
What he talks about,
And there's a politician
That has read and thought,
And maybe what they say is true
Of war and war's alarms,
But O that I were young again
And held her in my arms!


あの娘がそこに立っているのに、
どうしてローマやロシアや、
スペインの政治などを
気にしていられる?
だがこちらには自分の意見をしっかりと
心得ている旅慣れたお方がいるし、
そっちには書物を読んでものを考える
政治家もおいでだ。たぶん、
戦争や戦争の危険について
この人たちが言うのは本当なのだろう。
だが、ああ、私はまた若返って
この腕に娘を抱くことができたらどんなにいいか!

1939年1月に発表された詩、ファシズム、スターリン、スペイン内戦、そして、この年の9月にはヒトラーのポーランド侵攻に始まる大戦が迫っている。この年の1月28日にイェイツは亡くなる。最晩年74歳のときの詩ということになるのだろう。

これは政治に対するあきらめなのか、絶望なのか、アイルランドの詩人としての独特の思いもあるのだろうか。そういうことを一切出さずに、わずか二つのセンテンス(訳は3つの文にしているけど)に一挙に、素早く、軽く願望を述べて終わる。とても読みやすく、朗読しやすく、生き生きとした詩だ。しかし、ここで言われている politician、イェイツが揶揄の対象とするpoliticianなどは死にたえて、今ここにはいない。大衆の人気をとることに長じた政治家は依然として健在だけど。そういうことから考えても、なんと品のいい詩だろう、これは。

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