今日も充分に暑かった。この間、俳諧関係のことを少し書いたが、それに対して解酲子兄から大切なコメントがあった。それをまず、ここに再録しておく。何に対するコメントかも書くべきだろうが、自分の備忘録のつもりなので、それは省く。
(その一)
―ぜんぜん厳密な話ではないのですが、少なくとも杜国句の主体というか主格を、前二句と同じとすると、重大な打越嫌いにはなると考えられます。安東次男の『芭蕉七部集評釈』には、「一見、打越以下三句にわたって同一人物(姉なる人)の心理、動作が続くようだが、のこしてきた妹の上を思いやりながら湯を使っている人の、これは想像中の情景と見れば転じは悪くない」とあるけれど、これは不徹底のそしりを免れ得ないでしょう。いま手元に見当たらないのでどうとも申し上げかねますが、安東ののちの『風狂始末』においては、自他ということを中心に、それまでの彼の「読み」を組み替えているようです。
また、190において、籬がほとんど俳諧に稀だというのは、ご指摘あって初めて気づきました。似たようなものでは斎垣(イガキ)、瑞垣(ミヅガキ)などが見受けられますが、これらは目立ちにくいけれどあきらかに歌語やそれに準じるものです。これに類することを含め、神祇釈教に神経質な「俳諧」というものの、ある側面を思わざるをえません。
ちなみに、蕪村では句中に籬の語は見つけられないものの、れいの「うぐひすのあちこちとするや小家がち」の詞書に「離落」とあって、これは、「籬落」(まがき)であるとする註が、岩波の蕪村句集にあります。これなど、あきらかに詩(漢詩)の世界を句中に取り入れたものですが、さてこれが歌語と無縁であるかどうか。和漢朗詠集など見ても、なかなか俳句・和歌とか和漢の二分法ではままならないものがあると私は思います。―
(その二)
― 書架を探ったら、安東次男の『風狂始末』が出てきました。れいの冬の日「狂句こがらしの」巻の挙げ句近くの問題箇所の解を見てみたら、三句つづきの姉としたところ、此所は「わが祈り」がはらむべきものはわが妹の妊娠に関わること、そこから姉なる人が妹の「まゆかき」に行き、対して居湯を遣っている主体は妹その人である、というように、もとの『芭蕉七部集評釈』からは大きく読替をしているようです。一応ご報告まで。 ―
改めて、ありがとう。
以下、日録。
今朝は5時半から歩く。約9キロ。すこしく距離を伸ばす。7時過ぎには帰宅。猫の早く飯を供せよと吾を呼ぶ声はげし。これにすぐに応じ、すぐにシャワーを使ひき。あがるや否や計量器に巨体を載せしも針の振幅少なきに絶望せり。
散歩に疲れ、朝食の後、書斎にて仮眠。起くればすなわち昼なり。昼飯は冷やし狐を作製し、40余年の長きにわたって同居する戦友とともに食す。冷やし狐はなはだ美なり。猫の求むるに、その一切れを与えたり。彼もこれにて満ち足るがごとし。暑熱いよいよ甚し。
戦友の町に出づるを見送る。
―「懸命にゲイになろうとすることは、懸命に他者性を鍛えるということだ。攻撃性に防備するということだ。アメリカで、エイジアンもアフロもイラニアンもコケイジアンも懸命にゲマインな共同性を振り切って、法と経済を充足する「個」を確保しようとする。その闘争的な場面は必ずや「個」のフィクションを査問する声を呼び込む。複数が「我」を張り合う。それを煽るのは、「個」のフィクションを極限まで切り詰めた単数としてのアメリカ国家である。国家の「起源」を「個」のエレン・ヴィタールに折り重ねる図式的なハリウッドの活劇は、「起源」に関与するモラリティを叩き売るだけでなく、「起源」としてのアメリカ国家を無限に懐胎するのである。―宗近真一郎・「二人」の生成をめぐって・「ポエティカ/エコノミカ」所収―
という部分を、そうだよなあ、表現がいいなあという気持ちと、わかりそうだがまだわからない表現があるな、というようなことを、考えつつ、そうだ、ここで言及されていることのすべてはフーコーにあるのかもなどと、フーコーを読まねばなどと、考えているうちに、またまた眠っていた。
4時半に戦友の帰るを迎ふ。これより走りにゆかんと余の言ふに、馬鹿、あほと叱責さる。さらば飲むに如かず。以下省略。
よきことありぬ。敬愛する詩人より今日葉書をいただく。吾のかくものの文体に言及して、
「明解で生き生きと弾むようなところがあって、昔、切り絵をする人が、ハサミと絵をきびきびと動かしているうちに、いつの間にか、くっきりした造形が切り取られている…それを子どもの頃見たことが思い返されてきました」と評して下さった。書き写していて面はゆいけど、なんと人を励起する具体的な表現だろうかと感激する。果てまで持っていきたい表現である。(私個人を離れて)普遍的ですばらしい表現でもあることは言うまでもない。生きる勇気が湧いてくる。
ここまでお読み下さった人、ありがとうございます。
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