1
萩尾花五つを忘れ風立ちぬ
夏の盛りに白毫寺をたずねた、沈黙の葉のような汗を思い出す。
芽に子、あるいは芽だけ、萩をそう書く理由はあるのだろう、
すすきを尾花と言い換えるのと、似ているが違う。
あやまって秋となる。白秋の白の罅割れ
女郎花、をみなを思ふ、ふふ。
あらましを語れば厭世の人の千人斬り、
ますらをの醜のますらをの片恋さ、
人はみな、ええい、ままよ、よし!
言うぞ、言うぞ、秋と
湯殿川のこのススキの穂先を。
秋萩の咲きて散りぬる、ほへと!
くそっ、この
愛するひとにこひをする快楽!
―参照歌―
○人皆は萩を秋といふよしわれは尾花が末を秋と言はむ(万葉V10.2110)
○吾妹児に恋ひつつあらずは秋萩の咲きて散りぬる花にあらましを(万葉V2.120 弓削皇子の紀皇女を思へる御歌4首、より)
2
萩は絶対、白と!
どうして、きみはいうのか?
秋の草花の色をかすめて、白がそこに座ると、
風はすでに冬岸にむけて無数のはねを飛ばしている。
女郎花咲く野の萩
遠く呼ばれる
肩の荷を暗い背から降ろした
きみのために川が しとねのようにながれゆく
玉梓は折るだろう、玉梓は織られるだろう、
野の果てに秋の手紙、
萩は見れども飽かぬかも。
白露、白萩、散る、
行き逢う少女ら
いまだ飽かなくに、
―参照歌―
万葉集V10 2107~2118 など。
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