東京藝術大美術館「シャガール ロシア・アヴァンギャルドとの出会い」を観にゆく。マルク・シャガール(1887~1985)の70点ばかりとロシア・アヴァンギャルド(カンディンスキーも何点かあった)の画家の作品40点ほど、すべてパリのポンピドー・センターの所蔵作品からの展示で、このコンセプトも そのセンターのアンゲラ・ランプ学芸員の企画という、すべて丸投げのような展覧会である。シャガールは白ロシア(ベラルーシ)の町 ヴィテブスクの貧しいユダヤ人街に生まれた。20歳の時、そこから脱出するかのように首都サンクトペテルブルクへ出て美術学校に行く。そのあと画家としてフランス、アメリカで名声を獲得する。
ランプ学芸員は「シャガールは生前、「ロシアとの関係を切ったことは一度もない」と言っていた。シャガールとロシアの作家たちの作品の類似性や違いを知れば、これまで以上に深くシャガールの作品を鑑賞することができるはずです」と語っている。
彼の絵は東欧ユダヤ人としての生い立ちと旧約聖書のモーセを始祖とするユダヤ教的世界(彩色リトグラフ連作『出エジプト記』など)を含めての聖書的絵画テーマに深く浸透・影響されているので、その色彩のすばらしさに感嘆するだけでは、その絵に込められたカバラ的な神秘性を解くことは出来ない。本当に彼の絵はわかるのか?とてもわかりやすそうに見えるが、その表現の独特のスタイルが示唆するのは、私には奥深い宗教性のように思える。ユーモアのある筆致や妻や家族への臆面もない愛情の表現などから結構現代的なヒューマニストだと見られているが(もちろんそういう側面を否定はしない)、彼の根底は父祖たちのユダヤ教の世界と結びついているのではないか。次の絵は、この展覧会の展示ではないが明るいシャガールの背景にはこのヨブ的な嘆きもある。これは私の偏見かも知れないが。
Job Disconsolate
ロシアとロバとその他のものに(これは展示されていた。初期の代表作で、題名はフランスの詩人B.サンドラールが付けた)
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