2009年12月19日土曜日

望月裕二郎の歌集「ひらく」から

 昨日の授業で、今年後期の講義は来年一月の一回を残すのみ。講義の終わりに、去年の受講生で今は4年生の望月君が教室にいることを発見する。今年は他のものと重なって選択できなかったとのこと。卒業制作の短歌集が出来たのでと言って、一冊ぼくに持って来てくれたのだ。就職も某市役所に決まったという。このご時世に、よかったね、という。同人雑誌にも入ったか、作ったかしたとのこと。働きながら、好きなことできるのが一番だよと彼に言う。ぼくの詩集『樂府』を出して、サインしてくれというので、話してくれれば進呈したのにと言いつつ、なれぬサインなどしました。 以下望月君の歌集『ひらく』よりぼくの好きな歌をランダムに。歌集の後ろから前に引用してみる。

さしあたり永遠であれ人間の夜の舗道を伸びる白線

終電の窓が切り取る一瞬のおばさんの欠伸を見て僕も

落ち合えば君の隣に僕が立つ首から下のぼくのからだが

グリーングリーン歌う教室その横で先生言えり「泣きたいとき泣け」

つり革に光る歴史よ全員で死のうか満員電車

おお、われの口から出でし一行の詩がビルディングの間(あわい)泳げり

William Carlos Williams"This Is Just To Say"
朝食用冷蔵プラムを食べましたおいしく甘く冷たくゆるして

 小石川植物園
パピルスの葉に触れてみてわたくしがパンク・ロックを好んだ日々よ

 鎌倉
かまくらやみほとけなれど釈迦牟尼はパンチパーマでピアス痕あり

東京は猫の町なり猫議員選挙があらば投票に行かん

空を飛ぶとは良き発想なりヒヨドリは羽翼をちょっと僕らに見せて

目覚めれば地球は今日も窓際に朝陽を引用して回りだす

伝えたいことの不在を伝えたい 便器、おまえは悲しくないか

朝刊がポストへ沈むとき僕に睾丸の冷たさは優しい

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