2010年5月13日木曜日

The May Magnificant

The May Magnificant
Gerard Manley Hopkins

MAY is Mary’s month, and I
Muse at that and wonder why:
Her feasts follow reason,
Dated due to season—

Candlemas, Lady Day;
But the Lady Month, May,
Why fasten that upon her,
With a feasting in her honour?

Is it only its being brighter
Than the most are must delight her?
Is it opportunest
And flowers finds soonest?

Ask of her, the mighty mother:
Her reply puts this other
Question: What is Spring?—
Growth in every thing—

Flesh and fleece, fur and feather,
Grass and greenworld all together;
Star-eyed strawberry-breasted
Throstle above her nested

Cluster of bugle blue eggs thin
Forms and warms the life within;
And bird and blossom swell
In sod or sheath or shell.

All things rising, all things sizing
Mary sees, sympathising
With that world of good,
Nature’s motherhood.

Their magnifying of each its kind
With delight calls to mind
How she did in her stored
Magnify the Lord.

Well but there was more than this:
Spring’s universal bliss
Much, had much to say
To offering Mary May.

When drop-of-blood-and-foam-dapple
Bloom lights the orchard-apple
And thicket and thorp are merry
With silver-surfèd cherry

And azuring-over greybell makes
Wood banks and brakes wash wet like lakes
And magic cuckoocall
Caps, clears, and clinches all—

This ecstasy all through mothering earth
Tells Mary her mirth till Christ’s birth
To remember and exultation
In God who was her salvation.


五月はマリア様の月 そして私は
そのことを心に想い どうしてなのだろうといぶかる
 彼女の祝日にはちゃんとした理由があるのだ
 季節によってその日は決められるのだ―

御清めの祝日があり 御告げも祝日がある
しかし御母の祝日は五月なのだ
 何故その月を彼女にあてるのだろう
 彼女を祝う宴を開いて?

五月がどの月よりも輝かしいということだけが
彼女を喜ばせるのだろうか
 それは一番すばらしい時期なのだろうか
 花もすぐに見つかる時なのだろうか?

彼女に あのすばらしい御母に聞いてみるがよい
彼女は答える代わりに次のように問いかけるだろう
 春とは何でしょう?― そして答えて
 それは万物の成長の源なのです―

肉と羊毛 毛皮と羽根 草とみどりの世界
それらすべてのものの成長の源なのです と
 星のような眼をした いちごのような胸をしたつぐみは
 重なるように産みつけた一群の

青じそ色をした殻の薄い卵を抱いて
その中の生命を養い 暖める
 そして鳥も花も 芝地や莢や殻の中で
 だんだんと大きくなって行く

すべてのものがよみがえり すべてのものがそれぞれに育って行く
マリア様はすばらしい世界を
 自然の母なる姿をご覧になって
 心から共鳴されるのだ

万物は各の種をよろこびをもって
讃えている そのことは御母が
 胎内にお宿しになった主を
 讃えられたことを思い起こさせてくれる

いや しかしこれ以上のことがあったのだ
世界に行きわたる春のよろこびは
 マリア様に五月という月を捧げることと
 深い深い関係があるのだ

血の滴と泡の白さがまだらに入り混じったような花が
りんごの果樹園に灯をともし
 茂みと野原が きらきらと光る
 さくらんぼと陽気にたわむれ合って

あたり一面を青く染めたつるがね草が
湖のように 森の斜面と茂みを うるおすように波立たせ
 妖しいまでに美しいかっこうの啼き声が
 すべてをしのぎ 越え 圧する時―

この恍惚感は母なる大地に行きわたって
キリストの御生誕までのよろこびと
 彼女の救いである 神への歓喜とを
 マリア様がいつまでも心に留めておくようにするのだ
                (安田・緒方訳・春秋社「ホプキンズ詩集」より)

(ノート)
カトリックでは五月は「聖母月」とも言われるが、その理由をHopkinsらしい発想とすばらしい比喩で述べた詩と言える。書き写していて、翻訳の宗教臭に嫌になるところもあるが、それをこえて、特に5、6連、10、11連の自然のとらえ方のあたたかさや美しさは比類がない。

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