2010年2月3日水曜日

初雪

初雪や幸ひ庵にまかりある
初雪や水仙の葉のたわむまで

芭蕉の「あつめ句」より。貞享三年(1687年)。上の句は「我が草の戸の初雪見んと、余所にありても空だに曇り侍れば急ぎ帰ることあまたたびなりけるに、師走中の八日、はじめて雪降りけるよろこび」という詞書きがある。初雪をどうしても芭蕉庵で見たいとおもって、雪が降りそうだなと思うと、余所にいても急いで帰った、そういうことが何回も続いて、はじめての雪のときに「幸いなことに自分は草庵に居合わせたことですよ」という句である。初雪というものは「よろこび」で、自分の家の中にいて見るものでもあったようだ。そういう心の機微はまだかすかに底の底に残っているようで、昨晩白く降り積もるものを家の中から言葉を失い見ていたが、かすかに心はざわめいていたのである。なおここでの「師走中の八日」は太陽暦では1687年一月三十一日にあたるということだ。今年の東京の初雪と日を接している。

二句目はインプレッショニストの絵のようだ

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