わたしは生きる、と書いたあとに
撮影所に出る川べりを歩いている。
ひとつの主題として
梅雨空の下の容器から
音楽のなかに卵をとりだす。その前に
黒い点となって消えようとする人影を追った。 (健二)
2
蜜蜂たちの大量失踪の映像を見たあとに
受粉を待つ雌蕊のことを思った。
果実、卵、すべての無言の形が消えて、白い
鋼の色が叫んでいる交差点。
「ないということさえない」破れた殻のなかに
小さな鼓動とかすかな蜜の味、浅い朝に。 (英己)
3
雲の上、太陽の黒点が増えてゆく
路面にあいた無数の穴が土色の水を溜めている
男は交差点を左折して
向い側の白い壁の割れ目に入っていった
パソコンに向かうと
色のない夢の中のように体が冷えてくる (豊美)
4
成城学園前から千歳船橋へ
千歳船橋から千歳烏山へ
バスで移動した。
ちがう街の空気、穴と割れ目の
隠し方をそれぞれに工夫しているから
卵にむかう理由も変化する。 (健二)
(ノート)
連詩の掲載の仕方を考えている。いつでも三つの詩が読めるように載せるほうがいいかなと思う。つまり、三名の、そのとき一番新しいものが、最後に来るようにして、掲載してみようかなと。あまり長くなると、読むほうもだれるのではないか。次回からためしてみる。
(日記)
21日に、福間さんが書いたように、国立の『奏』で、7時から『詩を語る夕べ』をやるのだが、そのときの話の糸口になるような質問を考えている。たとえば、
<近くから>
①ぼくたちにとって、詩を書く、詩を読むというのは、どういう経験でしょうか?
②その経験にはどのようなリアリティ、アクチュアリティがありますか?
③「詩」について、まず思い浮かべることは、どういうことですか?
④「詩」以上の「詩」というのはあるでしょうか?
⑤読まれないといわれる現代「詩」を読むことの意味は?書く人はそれでもいますが。
<遠くから>
①詩(文学)・映画・思想、これらを横断するイメージがありますか?
②最近の事件について、たとえば秋葉原での「事件」、どう考えますか?そのことは「詩」を書くこととどうつながり、あるいはつながらない、と考えますか?
③この「社会」は、60年、70年、80年、90年、現在と構造的な変化をきたしていると思いますか?私はそう思いますが、そのことは上の事件や、「詩」をめぐる状況とも大きな関係を持っていると思います。そのことについて、ご意見があれば述べてください。
④今の自己を支える、あるいは支えになるかもしれない「何」かが、ありますか?どんなことでもいいですから、あれば答えてください。
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