2008年7月13日日曜日

連詩『卵』13

11 
半夏生の葉脈の白さをまだ見ない。
夏至にも気づかれることなく生活は過ぎてゆく。
貧しい卵をあたため、急に夏の盛りに
出遭う。ほのかな少女のあせばむ白いブラウスの夢。
浅い根の生きものたち、その秘められた感情の
最初のページにリスト・カットの血がにじんだ。    (英己)


12
あたらしい少女たちがやってくる
壊れそうで決して壊れない彼女たちが
楕円形の物語から抜け出して来る
カミソリの刃のようなところを平然とこちら側に
渡ってくる、根拠のないものの軽快さで眉を上げて
スカートから逸脱した踊る脚どりで         (豊美)
                   

13
「少女たちは欲望されると同時に欲望している」
と批評家Aは書く。何からぬけだしたのか?
「ほんとうは、この先にたのしいことなんか
待っていない」とわかったステップで、烏山通りから
甲州街道に出る。いくつもの断層を
隠し切れずに、世田谷の夜は炭水化物をきらう。   (健二)

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