丘をのぼる。
つぼみの桜と大きなメタセコイアの樹。
信と不信とをからませて花粉が飛び交う春を生きる。
斜面から富士が見える、
朧に。
高校生たちが腰を下ろしてお昼を食べている、
若さとともに。
のぼってきたのだ。
大丈夫?という声がときどき上滑りするのを
道の草は何回も聞いたことだろう。
「自然に匂うこと」と、生きる息たちに教えてくれた。
幽霊のように白い雪柳!
ものを言わないから言葉になって、
小さな鼓動が風のそよぎになった。
のぼっていることだけでいい。
終りのポイントはもう見えている。
おまえを送ることができなければ
おまえが送るのだ。
別れるまで
成熟すること、崩壊すること、
真昼のかすんだ富士の
分かち難さ。
斜面から湖が見える。
物語が波立ち、
渦を巻き、
若さとともに
道々の草がにおい立つ。
(註)タイトルはレイモンド・カーヴァーの文章のもの。村上春樹の訳を借りた。
この詩は、福間塾の「アンソロジー2008」に載せた詩です。小山さん、小峰さんはじめ、皆様ありがとうございます。今日拝受しました。すばらしい、粒そろいの詩篇がならんでいます。読むのが楽しみです。
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