2008年4月21日月曜日

成熟すること、崩壊すること

丘をのぼる。
つぼみの桜と大きなメタセコイアの樹。
信と不信とをからませて花粉が飛び交う春を生きる。

斜面から富士が見える、
朧に。
高校生たちが腰を下ろしてお昼を食べている、
若さとともに。

のぼってきたのだ。
大丈夫?という声がときどき上滑りするのを
道の草は何回も聞いたことだろう。
「自然に匂うこと」と、生きる息たちに教えてくれた。

幽霊のように白い雪柳!
ものを言わないから言葉になって、
小さな鼓動が風のそよぎになった。
のぼっていることだけでいい。

終りのポイントはもう見えている。
おまえを送ることができなければ
おまえが送るのだ。

別れるまで
成熟すること、崩壊すること、
真昼のかすんだ富士の
分かち難さ。

斜面から湖が見える。
物語が波立ち、
渦を巻き、

若さとともに
道々の草がにおい立つ。

(註)タイトルはレイモンド・カーヴァーの文章のもの。村上春樹の訳を借りた。

この詩は、福間塾の「アンソロジー2008」に載せた詩です。小山さん、小峰さんはじめ、皆様ありがとうございます。今日拝受しました。すばらしい、粒そろいの詩篇がならんでいます。読むのが楽しみです。

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