2009年3月6日金曜日

冬の百合

長崎の五島出身の人。田中俊廣という人の詩集『時の波打際』(思潮社)の書評を書いて、今日入校した。来月号の「現代詩手帖」に載るだろう。32編も入っていて読み甲斐のある詩集だった。そのなかで書評では言及しなかった短い詩にもいいものがあったので、その詩を書いておこう。

光陰

季に背いて
生きることもある
冬の百合
その花の純白
冷えきった心の奥に
日溜まりのような
香りの壺が砕け散る

もう一篇、

 鳥影

 するどく
 時を裂く翼
 黒い森
 風の廻廊を抜け
 青を深める冬の海に
 いのちの影を
 くっきりと
 描いているよ

「光陰」「鳥影」とも、とてもいい詩だと思う。書き写していて、「青を深める」という表現が何かに似ていると感じたが、啄木の「やはらかに柳あをめる」だった。伊東静雄の研究者らしい。1949年生まれだから、ぼくより一歳下の人。同年代といってよい人の詩集だった。

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