2009年12月17日木曜日

就活

 hさんは前回の出欠票を兼ねた授業の感想(リアクションカードと称している)に「周りがスーツだらけになってきて何となく気持ちが沈んで悲しい」と、授業とは関係ないが、自分の思いを書いてくれていた。彼女は英米文のたしか3年生だ。本当に、なんという社会、国なんだろう。大学の3年生で、ただもう就職のために奔走(スーツだらけ)するしかない、しなければならないなんて。そういえば、50名あまりのクラスの出席者のなかで、よくみると男性も女性もスーツ姿を見かけるのが多くなった。「いいよ、面接などの日程がわかっている人は前もって連絡してください、欠席にはしないから」などと頓珍漢なことを私は彼や彼女たちの前で話したりした。なぜなら企業の合同説明会が大学内であるということを知らなかったから、すべての授業が終わってから、もちろんいつもではないが。こういう例は恵まれた例だろう。多くは一日のすべてのエネルギーをかけて、どこかに「参上」するしかない。
 私は「文学講義、実作・実践講義」なるものを担当している。受講者の彼や彼女に詩の創作を課しているのだが、そこで「就活」をテーマとする作品もあらわれる「時世」になった。
 

昨日の話

最初の一杯で頼んだとりあえずのビール
食べられなかった茄子の一本漬に箸がすすむ
「珍しいね、スニーカーなんて」
つよしとは出会って半年だった
「流行っているからね」と
黄色くなった茄子の先を見ながら
卵と間違えて舐めた小学生のころを思い出した
「ビールはやっぱりまずいね」と
同時に入れたいつものボトルとジャスミン茶
「スーツ買ったの?」
賢人はいつものようにグラスを寄せるから
「明日から明日から」と
一気に飲み干す

気づいたら終電が出る時間

「また逃した」

どうやら僕は就活生らしい


 この作品は、いつもすぐれた詩を書くmくんにしてはあまり、というようなものだが、それでも、おもしろい。もっと考えるべきことはあるが、今晩はここまで。

2 件のコメント:

h さんのコメント...

大きくありのままを受け止めてくださると思ったので、その時の素直な気持ちを書かせていただきました。
今日も明日も明後日も明々後日もスーツですが、めげずに1スーツ人として存在しようと思います!!

ban さんのコメント...

読んでくれてうれしいです。

風邪などひかぬように体調管理に気をつけて「めげずに」存在してください。