2011年5月22日日曜日

A toast to Mr Barenboim.

A toast to Mr Barenboim

ダニエル・バレンボイムがボランティアのオーケストラを率いて、最近ガザでパレスチナの人たちのために演奏会を開いたということを藤永 茂先生のブログで知った。本当に、このブログの知的なレベル、その情熱の深さ、凄さははかり知れないもので、いつも勉強になる。オバマの最近の声明でパレスチナ国家の樹立とか、イスラエルの侵入の後退などが保証されるだろうか?歴代のアメリカ大統領の避けてきたこと、ユダヤロビーストとの対立までオバマが進んだかどうかはわからないが、この演説はそれなりの影響をこれから及ぼすものだと思う。しかしこれでパレスチナ問題、イスラエル問題が解決することは、やはり簡単ではない。この対立の根にあるものを我々が理解するには、政治や「国」というような考えから退却する、あえて言うのだが退く必要があるように思う。バレンボイムはイスラエルの新聞のインタビューに次のように答えている。

And from Israel? (イスラエルからは何を期待しますか?ban注)

I don’t know how well informed they are. I, for example, was not aware of the 12 universities. I did not know that there is such a thirst for knowledge. So maybe this will bring some people in Israel to think that this is a people worth having a dialogue with. Again, I’m speaking on the civil level and not the political level. I was not on a political mission and therefore I do not expect any political results. (なんとガザには12もの大学があるのだ、そのことにバレンボイムは驚きと期待を寄せている。)
The Palestinians have a right to a state of their own and to self-determination. We have to [allow] them to understand that we realize that our conflict is not a political conflict between two nations, which fight about borders or water, but it is a conflict between two peoples, which are convinced that they have a right to live in the same small piece of earth. Our destinies are inextricably linked.

I told the Palestinians in Gaza that I believe that the ambition of the Palestinian people to have the right to self-determination and an independent state is a very just cause. But in order for the just cause to be realized, it must avoid any kind of violence. Because the use of violence for the just cause only weakens it.

本当に"but it is a conflict between two peoples, which are convinced that they have a right to live in the same small piece of earth. Our destinies are inextricably linked. "ということを思う。

藤永先生は次のように書いている。
―インタービューの中で、バレンボイムが最も驚かされたのは、大きな野外監獄といわれるカザ地区に12もの大学が運営されていて,150万の人口の85%は30歳以下の若さであり、ガザは知識欲に燃える若者たちで溢れていた事だとバレンボイムは言っています。 ドイツに住み、昔からパレスチナの事に強い関心を持っているバレンボイムでさえ、この事実を知らなかったのですから、今の仰々しいマスコミが私たちに与えている情報が如何に偏向したものであるかが分かります。バレンボイムはこの若者たちにこそパレスチナの未来があると考えます。「いまから10年たてば、この、極めて豊かな知識を持ち高い教養を身につけた世代が多数派になる」と…(略)。
 私たちもガザのこと、パレスチナ人たちのことをもっと良く知らなければなりません。今回の大震災慰問の使者としてズービン・メータの訪日があれだけ盛んに報道され、感謝された一方で、バレンボイムのガザでの演奏会のニュースが事実上無視される理由にも思いを致さなければなりません。―

こういう状況がオバマの今回の演説で少し変化すればいいのだが。

もう一つ、藤永先生のブログから引用する。本当はこれだけを伝えたかったのかもしれない。以下の私はもちろん藤永先生、

― バレンボイムにも私はずっと以前から好意を持っていますが、バレンボイムとサイードの共著『Parallels and Paradoxes』(Vantage, 2004)を読んでなおさら二人が好きになりました。おまけに、「追悼:エドワード・サイード」と題するバレンボイムの文章が付いていて、これが何と2003年10月29日に私の住む福岡で書かれているのです。丁度、福岡でバレンボイムの率いるシカゴ交響楽団の演奏が夕方7時から行なわれた日でした。4頁の文章ですが、これだけでもこの本の値段(約千円)の半分の値打ちはあります。
 それによると、サイードの死の三ヶ月前、彼の要請でバレンボイムはバッハの平均率クラヴィア曲集から第1巻第8番の変ホ短調前奏曲をニューヨークのサイードの自宅で弾きました。サイード自身、プロ並みにピアノが弾け、グレン・グールドの熱烈なファンであったそうです。彼の忌日9月25日はグールドの誕生の日です。ここ数日、この変ホ短調前奏曲をグールド、リヒテル、アンドラス・シッフ、フリードリッヒ・グルダの演奏で繰り返し聴いています。リヒテルに最も惹かれますが、グールドから聞こえてくるのがピュアなバッハかも、と思う瞬間もあります。私のような者が、平均率曲集の中の曲の品定めをしても意味はありませが、この変ホ短調前奏曲はとりわけ胸の奥までしみわたる音楽です。福岡でこの文章を書いたバレンボイムの胸の中でもこの音楽が鎮魂の曲として鳴っていたに違いありません。―

というわけで、影響を受けやすい私は先ほどから、シフの「平均率クラヴィーア曲集」のcdの8番のプレリュードとフーガの両方とも何回も聴いているのである。すばらしい夜。
まさに「胸の奥までしみわたる音楽」。

0 件のコメント: