2008年9月18日木曜日

燈ともせ

いろんなことがあった一日だった。

午前中に、八王子のハイフェッツという弦楽器専門店に友人を連れて行く。テキサス生まれの男で、再来日した、十年来の友だ。日本で生まれた彼の娘は、今十歳になる。ヒューストンで育ち、そこでチェロを習った。日本への引越しのときに、弦が切れてしまった。チューニングなどもおかしいというので、ネットで調べて、この店に行ったのだが、以前から、眼には留めていた。とても雰囲気のいい店で、多分オーナーだと思うが、口下手な職人気質という感じの人が、弦を付けてくれ、チューニングしてくれた。しめて2300円だった。簡単だった。そのあと隣にあった、すかいらーく、で生ビール2杯を、チキンのから揚げのようなものをツマミにして飲んだ。彼が言うには、明日自分だけでテキサスに行かねばならぬという、例のハリケーン「アイク」の被害を、メキシコ湾沿いの家がまともに受けてしまい、一階部分が全壊したということだ。その片付けと、隣近所の手伝いのために、三週間ぐらいは滞在しなければならないということだった。彼の不運をともに嘆いたが、いつものように、陽気な、どうにかなるという調子に戻った。

そのあと、タワーレコードに頼んであった、息子たちのデビューアルバム「The World According to Stewart」というCDを受け取りに二人で行く。息子への祝儀のつもりで、ちょっと多く購入した、そのうちの一枚を、友人にプレゼントする。彼は、息子のことも知っているので、自分で払うと言ったが、相模原などのCD屋でもう一枚買ってくれと言って、渡す。

いつもは授業が5時間もあって、一番大変な日なのだが、文化祭の準備ということで、パートタイムの講師であるぼくは暇になった。我が家では、毎週木曜日が義父のお風呂の日であり、看護士さんと女房の二人が奮闘して97の明治男を洗う日である。ちょっとした失敗があり、義父の脚をいためてしまった。医者が来て縫ったりした。肝をつぶしたが、たいしたことにはいたらなかった。大丈夫だった。たまたま休みの日だったので、二人の奮闘と大変さを如実にあらためて知った。

いろいろやらねばならぬことがあるのだが、少しも展開・発展してくれないこともあり、そうでもないこともある。もう急ぐ必要もないが、かといって安泰に構えていられるような気分でもない。

永き夜や思ひけし行く老いの夢    蕪村

秋の燈やゆかしき奈良の道具市    蕪村

燈ともせといひつつ出るや秋のくれ   蕪村

(どうも最近、ブソニストになったようだ。)

【ゆかしき】

寄らないで過ぎちゃった、
遠い
道。

燈ともせと
ももすもも

老いのはなやぎ、
因果のことわりではない
ふらここ、ゆれよ!

寄らないで過ぎちゃった、
道。
遠い
遠さ。

秋の燈
ゆかしき
奈良の
お水取りのきよらかな狼藉の火

ふらここ、ゆれよ!

寄らないで過ぎちゃった、
鮎のゆかしき。
そういうもののすべての
ゆかしき。

秋の燈のゆかしき人のゆかしさよ!

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