2008年9月23日火曜日

Ophelia



John Everett Millais(1829-96)展を渋谷、Bunkamuraのミュージアムで観る。漱石の『草枕』で言及されていたオフィーリアの絵の実物をともかくも拝むことができた。昔、昔この絵の複製をアパートの汚い壁に貼り付けていたこともあった。「草枕」の語り手の画工は、この絵について語った後に、自分も「一つ風流な土左衛門を書いてみたい」と言うが、なぜか、このオフィーリアを土左衛門と呼ぶ漱石のこの部分だけは鮮明に覚えていた。今日美術館でもらったパンフレットの後ろには、この部分を含めた草枕の一節が引用されていた。

キーツやテニスン、ワーズワース、バイロンの詩の一節が絵のタイトルであったり、その詩に触発されたテーマの絵など。解説を読まないとわからない絵が多い、というより、絵画そのものが、風景画にせよ、当時の文学や時代の好尚と密接な関係を有して存在する、そういう絵であるので、絵のそばの解説を読まざるをえない。すばらしい肖像画、かわいらしい子どもたちのそれ、眺めるだけでいいのだが、つい誰、それの?ということで「読んでしまう」、ということで非常に疲れてしまった。

ラファエル前派という集団の一員の実物を、ロンドンのテートギャラリーまで行かなくて、日本は渋谷で見ることが出来たということだ。ロンドンで見たら、また違う感じ方があったのかもしれない。

ビクトリア王朝の栄光と衰退のすべてを、どれだけ観る者が深く感じられるかによって、これらの絵の印象も違ったものになるだろう、などと思った。

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