2008年7月5日土曜日

連詩『卵』11


破壊された戦車の下で微笑んでいた、
ゴラン高原の写真集で。
天使の足元から話しかけてきた、
サンタンジェロ橋の石畳で。
三浦半島の崖では鳥の巣のようにむらがって、
風に吹かれている。あの小さな薄桃色の花     (豊美)


10
『花の慕情』という五〇年前の映画の
花と司葉子。死んでいる卵のなかの
二種類のいのち。ただ立つものと
立って歩くもの。風のなかの
枝たち、どんな美しさをおそれあって
物語の崖をとびおりる鋏に切り落とされるのか。    (健二)



11 
半夏生の葉脈の白さをまだ見ない。
夏至にも気づかれることなく生活は過ぎてゆく。
貧しい卵をあたため、急に夏の盛りに
出遭う。ほのかな少女のあせばむ白いブラウスの夢。
浅い根の生きものたち、その秘められた感情の
最初のページにリスト・カットの血がにじんだ。    (英己)


(日記)

○ 福間さんの10を、阿部嘉昭さんが、そのblogで「素晴らしい詩句」として紹介していた。
具体的には、その後半部を阿部さんなりに改行して示したうえで。以下のように紹介されている。


風のなかの枝たち、

どんな美しさをおそれあって

物語の崖をとびおりる鋏に

切り落とされるのか


原詩の改行を改行し直して見えてくる新たな美、阿部さんの慧眼を感じた。

○ 昨晩は気の置けない友人たち三名と吉祥寺で飲んだ。中央線は事故の影響で大幅に遅れていた。八王子から吉祥寺まで、昔はあっという間だと思ったが、結構時間がかかった。昔懐かしい、ハモニカ横丁の洒落た?店、これも新しい経験だった。学生時代の汚れて、小便の臭いのする横丁などは、どこにもない。しかし、あの路地が残っているということは奇跡的なことかもしれない。 

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