2010年7月24日土曜日

草の夕ぐれに

 二人だけの芭蕉七部集読書会。今日、午後2時から、八王子の子安市民センターで昔の同僚(彼は去年引退して、都の非常勤教員をやっている)と二人で「冬の日」の第一歌仙「狂句こがらしの巻」を読む。三十畳もあろうという和室、舞台まで付いている。もう半分の部屋が向こうにあり、その仕切りを開放すると小さな講堂や宴会場にもなろうかという作りだ。友人によると、舞台を使わなければ800円でいいとのこと。午後1時から5時まで。友人は、ペプシコーラの大壜二本とポテトチップスまで用意してきた。それだけではない、なんと彼は水筒に氷を入れ、当然のように角瓶の小さな奴まで隠していたのだ。大丈夫か?大丈夫ということで、まず畳の上にそこにある和室用の長机をセットし、彼は持参したプラスチックのコップに二人分のウイスキーのコーラ割を作る。乾杯と、小さくささやき、今回は彼の発表(驚くなかれ、七部集を読破するまで、この会を続けて行こうという決意なのだ)だから、彼の講読がはじまる。印象に残った付合の部分、

 二の折の裏、揚句に至る三句、

  わがいのりあけがたの星孕むべく  荷兮
   けふはいもとのまゆかきにゆき   野水
  綾ひとへ居湯に志賀の花漉して    杜国

この三句の主体をどう定めるか。彼は「いもと」の姉でいいと言う。それは彼の全くの想像なのだが、安東次男の読みとあらかた一致しているのに私は驚いた。 荷兮の奇想、野水の品位、杜国の美しさ、われわれが確認したのはそういうことだった。

 それから個人的に、この歌仙で一番好きな句は、芭蕉の「うしの跡とぶらふ草の夕ぐれに」という句である。その理由は、秘密。もし、私に次の詩集を出す機会が恵まれるなら、「草の夕ぐれに」というタイトルにしようなどと……

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