2009年7月19日日曜日

野々宮

17日(金)
有楽町の出光美術館なるところに初めて行く。「やまと絵の譜」という特別展(日本の美・発見Ⅱ)を観た。思っていたより、ずしりと重い、私のような素人には見応えのある展覧会だった。
 
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入館すぐの場所に展示されていた、岩佐又兵衛の絵には心底惹かれてしまった。モノクロの絵で、六条御息所を野々宮に尋ねる「賢木」の場面から取材したものである。うなってしまう。荒木氏という武将の末裔が描いた光源氏は大きい。この画家特有といわれている弓なりの姿勢で黒木の鳥居の下に童子をしたがえて佇立していた。王朝というよりも、時代をこえたノスタルジア、愛する者を、しかも恐れつつ愛するものをたずねようとする男の立ち姿、ノスタルジックなそれを強く喚起させる。深く息を吸い、しかし正面から愛し恐れるものを見つめようとする大男。

 
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〈在原業平図〉もすてきだった。これも歌仙絵とは異なり、業平の珍しい立ち姿である。画賛がまた業平の立ち姿のあでやかさとはコントラストをなす業平の歌である。伊勢88段、
― 昔、いと若きにはあらぬ、これかれ友だちどもあつまりて、月を見て、それがなかに一人、

おほかたは月をもめでじこれぞこの積もれば人の老いとなる物    ―

岩佐又兵衛という絵師をもっと知りたくなった。英一蝶の〈四季日待図巻〉もいい。展示の仕方、全体の雰囲気、すべてよかったので、長時間滞在して、すっかりくたびれた。そこから女房と二人できれいではなやかなビル群を通り抜けて東京駅まであるく。のどが渇いて、洒落た感じのイタリア風?の居酒屋に入る。五時前ということで、ビールだけを二人で飲んだ。ここは50点ぐらいのところだった。それにしてもこの一画の豪勢なことよ。多摩のお上りさんには少々居心地が悪かった。

18日(土)

昔の職場、小川高の卒業学年のお母さんたちと飲む。一年前から企画してくれた会だった。楽しかった。

19日(日)

散歩。湯殿川。八王子米の田んぼと私自身が名付けた稲田がある。そこに鴨の家族が居た。全部で10羽くらいのグループ。小さなものもいる。苗の何列かは彼らの遊泳のために無くなっているが、これも意図したものだろう。むかしなにかの記事で鴨をわざと泳がせて稲田の栄養としているというような記事を読んだことがある。鴨たちが有害な物を食べて、いいものを排泄するのだろうか。それにしても、私はいつの散歩でもそうだが、この水を湛えた稲田を見ると、そこにいつまでも佇んでいたくなるのは、どうしたことだろうか。

七部集〈猿蓑〉の歌仙のなかの「夏の月の巻」は次のように始まっている。

市中は物のにほひや夏の月   凡兆
 あつしあつしと門ゝの声   芭蕉
二番草取りも果さず穂に出て  去来

この去来の第三を突然思い出したりした。

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